DeepL小説、Grammarly小説の未来(5)ー 翻訳はこう進めた 2/2

 

2.第2ラウンド以降

第1ラウンドでできあがった全体版の英文をチェックしていった。もちろん整合を取るため、日本語版も参照しながら。

(1)初期

日本語と英語の根本的な相違

初期のころはやはり翻訳自体に必死で、英語の質を上げることに悪戦苦闘していたように思う。

別の機会に詳しく書きたいが、英文、それも小説という形で書く時に、根本的に日本語とは異なる部分をどう処理すればよいかがわからなかったのだ。

例えば、語り手の記述の時制だ。過去形で書くのか現在形も使ってよいのか。それから、日本語の男性言葉、女性言葉。日本語で書いた時にはこれに大幅に頼っていたことが、英文化して初めてわかった。

(2)中期〜後期

内容面の問題

2〜3ラウンドを重ねた後からは、翻訳の質もさることながら、内容に問題を感じ始めた。

DeepLとGrammarlyの話からは外れるが、翻訳をしているとストーリーの端々に矛盾点を見つけたり、冗長な部分や脱線している部分が目についてくる。長すぎて日本語版でも追いきれなかったのだ。

どこかで諦めることも必要なのだが、これだけの作業をやった後では、やはり見逃すのには忍びなく、結局日本語版と合わせて修正をすることにした。

日本語版には翻訳スタート時点からの修正履歴を全て残してあるが、結局大小合わせて修正点は1000か所以上にもなっている。一つの章の半分ぐらいを書き換えたこともあった。

細部の品質、配慮

他にも用語の適切性でわけがわからなくなったこともある。monitor, screen, on display, on the displayの違いとか、pipeとtubeの違いとか、speededとspedの違いとか、今でも頭の中がもやもやしている。

また、よせばいいのにストーリーの中では神という言葉を何度も使っている。日本語で書いている時にはさほど気にならなかったが、英語で外国人が読むことを想定すると、宗教的な話はやはり注意しなければならない。

Godなのかgodなのかgodsなのか?deityという単語もこの時初めてDeepLに教えてもらった。

しかし今は便利になったもので、だいたいの疑問にはネットが答えてくれる。ただ、日本語で検索していてはあまりヒットしないので、英語で検索して答えを見つけることもしばしばだった。そんな時にもDeepLは活躍してくれた。

(4)最終期

気になって仕方がない

最後の2ラウンドはやるつもりはなかった。もう十分だ、これ以上無理だということで第8ラウンド終了をもって、完成にしてしまおうと思っていた。

で、終わってからやれやれと思って、自分がどれほどのことをやったのかともう一度最初からパラパラと眺めてみるのだ。

この頃にはamazonが提供する編集ツール(本文の他にも、コピーライト、目次、献辞や著者バイオの部分などをかっこよく仕上げてくれる)も使っていたので、どうしても仕上がり具合を見ることになる。

すると見つかってしまうのだ。あ、ここ間違ってる、と。しかもマイナーなものならまだしも、ちょっとこれはひどいなんていうのが見つかるとどうしようもなくなる。

ということで、また初めてしまった。そうすると更に、間違いではないがもっと良い表現ができないかとか、同じ単語が頻繁に出てくるとか、文が長すぎるとか、その他の品質面での問題も気になってくる。

無限のスパイラル

つまり、1ラウンドこなすごとに、自分のスキルも上がっていくのだ。

だから、ラウンドを終えて最初に戻った時、今よりも1ラウンド分スキルが低かった時の英文を見ると、ここはこうすればスッキリするのに、とか、同じ単語が近くに三回も出てるじゃないか、なんてのが見えてしまうのだ。

結局これをやり続けると無限のスパイラルを登っていくことになる。だから、最後ははっきり期限を切ってそれまでとは異なるやり方をした。

まず英文を数ページ分ずつDeepLにかけ、次に右欄の日本語訳を読んでみる。ここでおかしな訳があると、その原因をつきとめて修正。

さらに今度は左欄の英文を、前に書いた通り読上げ機能で読んでもらう。もう短い時間内に、自分の目で細かい字を追って読むのは疲れてしまって無理だ。それに、そういうやり方をすると木を見て森を見ずになってしまうだろうと、自分に言い聞かせてやった。

そうやって、質を上げ(られたかな?)、残ったミスを潰していった。まあ、それでもやっぱりミスはたくさん残ってますけどね。

 

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手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

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英訳の経緯はこちら

 

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