マレーシアの冷房について

電車の記事を書いていて思い出しました。クアラルンプールで電車に乗ろうとすると、よく乗客が扉の前に何人も立ったまま、乗り込もうとする人の邪魔になっているのに出くわします。

中がガラガラに空いているのに奥に入らないので「電車に乗り慣れていないんだな」と思い、「ひとつ電車の乗り方のマナーを教えてあげよう」と余計な事を考え、自らこの人たちをかき分けて奥に入ってしまうことが時々あります。

しかし、割と高い確率で「しまった」と後悔することになります。

空いているのにはちゃんと理由があって、その部分がエアコンの吹き出し口の真下になっているんです。特に列車の連結部付近や先頭車両の一番前あたりが厳しい寒さに晒されています。

季節変動があって雨期などに雨が続いて外の気温があまり上がっていないときの冷気は半端のない冷たさで、わずか10分ほどの乗車時間でも心臓がどうかなるんじゃないかと心配になってしまうほどです。

マレーシアに来たことがある人、特に仕事で会議室に入ったことがある人はよくご存知だと思いますが、マレーシアの会議室の寒さは尋常ではありません。陽が射さない大きな会議室に、たまたま他に場所が無いということで4〜5人の少人数で入って会議をすると、冷え性の私の手は1時間後には紫色になってしまいます。

なぜこんなに冷やすのかと思いますが、まず、いまほど経済が発展していなかったころにはきっと冷やすことは贅沢であり、お客さんを呼ぶ時のもてなしだったんじゃないかと想像します。その名残がいまも続いているんじゃないでしょうか。

それから、設備の問題もありそうです。大きなビルでは冷気はダクトを通じて供給されますが、古いビルや間仕切りをあとから追加したような部屋では冷気の吹き出し量の調整ができなかったりします。

陽のあたる部屋と窓もない部屋では温度が全然違うので、陽の射す部屋に冷気の温度を合わせてしまうと、ほかの部屋では白熊とペンギンしかくつろげないような状況になるんでしょう。

そしてもう一つ大きな理由なのではないか、と思うのがマレーの女性の服装です。

ご存知のとおり、マレーの女性はムスリムなので、ほとんどの人は頭にトドンと呼ぶスカーフのような布を被り、肩まで覆ってしまいます。また、肌をできるだけ出さないように長袖で裾の長い服を着ます。

話を聞くとトドンを一日中身につけているのは結構大変で、冷房した部屋でも温度が高めだと汗がじとっとにじむようになることもあるそうです。

そう、彼女たちはそもそも冷気に直接肌がさらされるということがほとんどないんです。特にトドンは首筋から肩にかけて一番寒さを感じやすい部分を覆っているので、冷気には強いと言えるでしょう。


トドン
(これしか写真がなかった m(_ _)m)

マレーシアの冷房は彼女たちに合わせているというと言い過ぎだと思いますが、多民族国家で互いに寛容であろうとするマレーシア人はある程度そういうことを意識しているのではないかと思います。

実際、オフィスで働く男性は熱帯の国であるにも関わらず、ほとんどの人が長袖のシャツを着て仕事をしています。もちろん通勤もそのままです。

半袖シャツを着ているのは私のように来たばかりの外国人だったりします。私も最初の頃は熱帯なんだからと半袖シャツを着ていましたが、ほどなく長袖シャツを着るようになりました。

こんなマレーシアの冷房事情ですが、慣れてくるとこれが普通になり、たまに夏に一時帰国した時には日本のオフィスの温度設定が28℃で、冷房をかけているのに汗だくになったりするので、「もっとキリッと冷やさんかい!」と文句を言いたくなったりするのでした。

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