ボルネオ島にあるサラワク州の州都クチンに行ったことがあります。街の中心部をサラワク川がゆったりと流れてとても気持ちがいい綺麗な街です。
サラワク川から見たクチンの街
クチン(マレー語)= 猫、道路の真ん中に猫の像がある
仕事の関係で、州の主催で開かれた大きなレセプションに参加させてもらったのですが、サラワク州政府関係者とサラワクの発展に関係のある団体や大学、企業などさまざまな関係者が何百人と集まる、ちょっと日本では考えにくい大きなパーティーでした。
マレーシアでもある程度あらたまった会合の際にはきっちりと招待状を出しますが、もらった招待状のドレスコードが男性はタキシードだったんです。
それまでに出たことのあるマレーシアの夜のレセプションは、どんなに偉い人が出るときでもシルクのバティックかダークスーツを着るかで済んでいたので、ちょっと面食らいました。タキシードは自分の結婚式の時にしか着たことないし、そんなもん持ってないよと思いつつ、しょうがないから黒の蝶ネクタイだけ買って、黒の礼服を着て誤魔化すことにしました。
でも、ちょっと気をつけた方がいいんです。こういうのを真に受けて頑張った格好しても、いざ会場に行ってみると普段着の人がいっぱいいたりして、かえって頑張った方が浮いてしまうということもありがちです(実はこの時着た礼服も以前”真に受けて”買ってしまったもの)。というわけで、この時は蝶ネクタイが”浮く”可能性があるので、いつでも取り替えられるよう普通のネクタイもポケットに忍ばせて参加しました。
ところが、会場に着くとみんなちゃんと着ているんです。タキシードを。もちろん100%ではなく7〜8割ぐらいの印象ですが。あの腹巻きみたいなのもちゃんと着けています。
見ていると、私も含めてサラワクの外から参加した人はマレーシア人も外国人もタキシードの着用率はかなり低めです。着用率が高いのはサラワク州の人達のようです。もちろん州政府の上からの指示でしょうから守らないわけにもいかないでしょうが、貸衣装屋もそんなにあるわけないので、皆さんもともと持っているとしか考えられません。
マレーシアなので政府が正装と認めている長袖のバティックかスーツでいいじゃないかと思ったのですが、考えてみれば半島部ほどバティックの歴史はないし、そもそもサラワク州は連邦政府と距離を置いているし、半島とは少し違うのかも知れません。
そして何よりも、あとで知ったんですがサラワク州には昔イギリス出身の王様がいたんですね。19世紀半ばから第二次世界大戦の頃まで、3代にわたってイギリスの後ろだてで”ホワイト ラジャ(王)”と呼ばれる白人の王様がサラワク王国を治めていたんです。きっと、タキシードを着る文化はその頃に根付いたんだと、あとで勝手に自分で納得しました。
本当にサラワクではタキシードをよく着るのか、その後誰かに聞いたわけではないし、他の州よりイギリス文化が色濃く残っているという話も聞いた事はないので、確かではありません。しかし、思い返すと皆さん慣れた感じで、楽しそうに前に出て余興をやったりしてたので、きっとホワイトラジャ以来の文化なんだろうと今も思っています。