DeepL小説、Grammarly小説の未来(2)ー 自分の能力の限界

というわけで翻訳を始めたのだが、DeepLもGrammarlyも始める少し前から使い始めていた。

マレーシアでセニョ〜ムという月刊情報誌が発行されていて、基本は日本語がメインの在住者向けなのだが、最近は英語で日本の紹介をするページにも力を入れている。その英語パートで半ページほどの記事を掲載させてもらっていたのだ。

最初はGoogle翻訳一本やりで取り組んでいたのだが、何度か記事を書いているうちに英訳ツールを探し始めた結果、DeepLとGrammarlyを見つけた。だから、どの程度使えるのかは少しはわかっていた。

ちなみに、小説の翻訳にあたってはGoogle翻訳にも参加してもらい、DeepLとGrammarlyをメインに、Google翻訳を時々使うという形でやった。どんな使い方をしたかはいずれ書こうと思う。

できあがり↓

LIARS IN SPACE:RIN ATO

これらのオンラインツールは自分の英文作成の能力を飛躍的に高めてくれる。しかし、どのくらいの高みに行くことができるかは、依然自分の英語に関する能力が決めてしまう。

翻訳ツールといったってまだまだ完璧ではないし、小説などの、ときに芸術性を追求する分野では正解さえ存在しない。また、自分の日本語の能力も大いに影響するだろう。

こういうことは最初からわかっていたので、翻訳を開始するにあたっては、いくつかのことをハナから諦めてスタートした。

1.英語の単語やフレーズそのものの美しさは追求しない

だって、そもそもわからないもの。それでもたまにDeepLが提案して来た単語やフレーズで、カッコいいと思ったものは積極的に残した。nice and lushとかa speck of sandとかこれまで見たこともない表現だが気に入ったので使った。一応調べたが、変な意味になっていないか、スラングとしてマズい意味にならないかなど、祈るしかない。

だけど、ここぞと思うシーンだけには時間をかけてカッコ良さそうなフレーズを何度もツールで試して作ってみた。

2.難しい単語は使わない

上のカッコいい表現とは少し矛盾するけれど、単語は極力知っているものを使うように努力した。馴染みのない言葉を無理して使うと、全体のバランスを崩しそうだから。新しく知った単語を使わざるを得ない場合も、他のやさしい単語で代替できないかどうか試してみてからにした。

3.ブロークンイングリッシュやスラングは諦める

実際の会話では絶対にこんなめんどくさいフレーズにはならない、とわかっていても、それを崩すことはほとんどのケースで諦めた。やったとしてもGrammarlyが許してくれる範囲に限定した。無理してやったら、きっとチンケな表現になるし、300ページにわたって徹底するのも無理だからだ。

キャラクターを特徴づける口癖みたいなものも、諦めた。できるはずがない。

地道にやったのは、会話の中ではit’sのような省略形をできるだけ使うのと、that節(?)のthatを省略できないか、なんてことだ。

でも、文章を読む人にとってはこれが一番ネックになるだろうなあというのが正直なところ。外国の小説の日本語訳でも、堅苦しくて長々と面倒臭い文章が並んでいてとても読み続けられないようなものもある。しかしこの点については、どうがんばってもどうしようもない部分だった。

そもそも、大学を卒業してから仕事で英語を使い始めたのは30を過ぎてからだし、留学もしていない。ただし、マレーシアでは合計5年少々過ごし、英語を使って仕事をした。

また、口語の英語はずっと無視してきた。英語を話すにしても、外国人は外国人然として話すべきで、ネイティブっぽい話し方をする必要などないとずっと思っていたからだ。それが今に影響している。だから、映画の英語なんてほとんど聞き取れない。

ちなみに4年ほど前に初めて受けたTOEICの点数は880点だった。一般的には高い数字だと思うが、いまや高得点の人はいっぱいいる。特に職場は英語が必要なところだったので、まわりにはいくらでも上手な人がいた。

だから、英語は好きではあったものの取り立てて得意という意識はなく、特にヒアリングには苦手意識が強くあった。そんな中でやったのが、今回の試みなのです。

 

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

英訳の経緯はこちら

 

DeepL小説、Grammarly小説の未来(1)ー 英訳事始め

月日が経つのは速いものだ。1年間何をしていたのかというと、自分の書いた小説の英訳だ。SF、しかも長編。日本語で23万字、英語で10万ワードとすこし。文庫本にするとたぶん300ページを超える。なぜ素人がそんな無謀なことをしたのかというと、無謀だったからだとしか言えない。

コレ↓

シライン(改訂版):亜東 林(あとう りん)

が。amazonで電子本を出すことはできる(KDPという仕組み)。しかし、当時日本のアマゾンサイトでは紙の本にはすることができなかった。電子本もいいがdeleteキーひとつで消えてしまう。やはり自分で書いたものが紙の本になるのを見たかった。もちろん、英語人口の方が多いという考えもあった。この辺りが動機だ。

だから、電子本に加えて英語できれいな紙の本を出せるアマゾンの英米サイトで作ることにした。そんな気にさせたのが、タイトルに書いたAIを使った翻訳機と英文法チェッカーだ。これがなかったら、英語にするなど考えもしなかったことは間違いない。

ところが翻訳を初めて数か月してから、日本のアマゾンでも日本語の紙の本を出すことができるというお知らせメールが来た。でも、もうその時には止められなかった。というより、止まろうとも思わなかった。その頃にはできあがりつつある英語版に愛着がわいていたのだ。

DeepLというAI翻訳ツールは、文書ファイルごと一括翻訳もできる。これをやった時には、ほんの数分で全文を英文翻訳してくれた。それから1年間かかった。本当は2か月、まあ手間取っても3か月でやってしまおうと思っていた。しかし、甘かった。

ただし、そのぐらいの期間で意味が誤解なく通りそうな翻訳はできていた。どれだけ時間がかかるかは、自分の諦めと決断次第だ。結局、冒頭の「月日が経つのは速いものだ」の「はやい」は、「速い」か「早い」かといったようなこだわりをもちながらやると1年かかってしまったのだ。

中国ではAI翻訳を使って小説を速攻翻訳して売っているなどとも聞くが、それとは対極の使い方をしたということだろう。どちらがいいかという話でもないし、自分でやった結果のクオリティーも客観的には評価できない。

だから、これが良かったのかどうかはわからない。だが一つの試みとして同じようなことを考えている人の参考になるのではないかと思うので、この経験を書き残しておこうと思う。

おそらく、こんな経験をした人はそう多くはいないと思うので、書いた小説よりもこの経験の方がはるかに価値が高いだろう(ここは納得するのではなく笑うところだ)。

最初に結論だけ書いておきます。

AIはこの大作業に取り掛かる気持ちにさせたことに最大の価値がある。

AI has the greatest value in having made me feel ready to undertake this great task.

*上の英文はこのページの日本語全文をDeepLにかけた際の、該当部分の第1翻訳文です。

 

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

英訳の経緯はこちら

 

神社のこと(7)ー セミ

さすがに夏休みになると、毎日のようにセミ捕りに行っていました。昭和の日記帳に書く、白のランニングシャツに短パンという典型的な姿になって。

神社にいたセミの種類は、アブラゼミ、ニイニイゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシぐらいかな。このうち、捕まえるのは9割方、アブラゼミかニイニイゼミ。ヒグラシは捕まえた記憶がありません。声だけです。

チッチゼミという小さいのも見たような気がします。でもたぶん自分で捕ったのではありません。

玉虫もよく見かけました。玉虫はあまりにありふれていて、しかも捕まえるのが簡単なので、そのうちほとんど見向きもしなくなりました。

残念ながらカブトムシやクワガタムシがいるような場所ではなかったので、甲虫とは縁がありません。コガネムシにはあんまり興味を持てず。

竹の物干し竿の先に網をくくりつけてという、本当に典型的な昭和の子供の姿で、夕方には汗でずぶ濡れになって帰ってくる毎日でした。

セミ捕りにあれだけ夢中になれるのは、きっと見つけることや捕ることの難しさのバランスが絶妙なんでしょうね。簡単すぎても難しすぎても続かないでしょうから。

経験を重ねるにつれて多少技術の進歩も実感することができるし、思いっきり何かの本能を刺激されてたんだと思います。

あのセミの鳴き声と暑い暑い夏は本当にいい思い出です。