DeepL小説、Grammarly小説の未来(7)ー AI翻訳で出会った現象 3/3

3.DeepLの不思議な振る舞い

つづき

最初はぞっとした

翻訳を始めた頃、あるいは、翻訳を始めるにあたって少なめの文章でテスト翻訳をしているころだったかな。たしか英語から日本語への翻訳文の文頭に「…」という、なんと呼ぶのか知らないが、躊躇いを表したり、文尾であればことばの余韻を残したりする表現が現れたのだ…

これは今でもたまに出くわす。もちろん、元の文にはそんなものはなく、普通に言い切っている文章だ。

しかし、これを初めて見た時には驚いた。その前後の文脈からまさにぴったりの表現だったからだ。ええっ!こんなことまでできるのか、と。

たまたまその時は真夜中の2時か3時頃だった。薄暗い部屋の中で眺めているディスプレイに、「どうだい?この訳は気に入ったかい?」とでも表示されたらどうしよう、とゾクゾクっとしたのをよく覚えている。

実は最近も興味深い現象に出くわした

どう書こうかと思ったが、本の宣伝も兼ねてその時のスクリーンショットを下に貼っておく。

この本をamazonに出してから10日ほどした頃、何かの役に立つかもしれないと思い、この本に関する英語の簡単なホームページを立ち上げた時のことだ。

著者の言葉として数行のメッセージを載せておこうと、DeepLに翻訳してもらった時の画面である。もちろんまだ一切修正はしていない、一番最初の翻訳文だ。

(クリックで拡大します)

よく見比べてほしい。右側の英文のAmazon.co.ukの部分だ。

左側の日本文にはそんなこと一言も書いていない。DeepLが、Amazon.co.ukで買うことができるという文を付け加えてくれているのだ。(敢えて好意に感謝する「くれて」をつけておく)

UK(イギリス)を選んだというのも驚きだ。実は私はこの本をUKのサイトから入って作ったのだ(ただし、結局は.com、つまりたぶんアメリカが管理するサイトに誘導される)。

さらに、このサイトでは本を売るメインターゲットの国はどこかと聞かれるので、UKだと登録してある。ひょっとすると、DeepLはネットでサーチしてそれを知ったのかと思ってしまう。各国サイトでの売値を比べれば、UKがメインであることはわかるかも知れない。

これがもし人に翻訳してもらっているのなら、間違いなく「ああ、親切にこんな文章を付け加えてくれたんだな」と思ってしまう。

もう少し驚きの理由を説明すると、この小説にはエイリアンとか宇宙船も出てくるのだが、実は話の骨格は人工知能のことなのだ。人工知能がもたらすリスクを描きながら、それを克服する方法があるはずだと問いかけ、AIを建設的に捉えようという内容なのだ。

考えてみればDeepLの人工知能はこの小説の数少ない(笑)読者の一人(一つ?)だから、自分達を肯定的に捉えている小説を売ってやろうという動機が働いても不思議ではない。

と言いながら、真実はたぶん、決まり文句のように何度も使われた英語のフレーズを引っぱって来たということだろうし、UKにしたのは小説がイギリス英語だからということに過ぎないだろう。

しかし、AIとこれだけ密着して作業をしていると、なにやら単なる機械ではない何かの存在を感じてしまうことがあるのも事実だ。

 

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アダムの選択(亜東 林)

 

手のひらの中の彼女(亜東 林)

 

シライン(亜東 林):改訂版

 

LIARS IN SPACE (Rin Ato):シライン英訳版

英訳の経緯はこちら

 

DeepL小説、Grammarly小説の未来(7)ー AI翻訳で出会った現象 2/3

 

3.DeepLの不思議な振る舞い

しれっと一文飛ばす

右側の翻訳欄の文章をよく見てみると、左側の入力文のうちの1つの文の訳が全く欠落していることがある。

理由はいろいろあるのだろうが、一つはうまく訳せなかったのかなと思わせるもの。元の文がその一つの文自体の中で矛盾した構造になっていて、意味をなさないような場合は飛ばしてしまうようだ。

他の例では、左欄にペーストした英語のパラグラフの中の、一つの文の末尾のピリオドの前に、余分な半角のスペースが1つ入っていた。それに気づいてスペースを削除すると、欠落していた文の訳が右側の翻訳文の中に現れた。

また、私は会話文の括弧にはダブルクォーテーションマークを使ったが、その最初の「”」のあとにスペースを入れないと、日本語に訳してくれないなんてのもあった。

あれだけ大胆な意訳をしてくれるのに、妙に細かいところにこだわるものだなあと不思議な感じがする。

前に出てきた訳と違う

これは仕方ないというか、AIたる所以だろう。むしろAIの長所とも言えると思う。つまり常に学習をしているのか、それともいろんな翻訳の可能性を提示するために、意図的に揺らぎを与えられているのではないかということだ。

また、元の文のほんの一つの漢字をひらがなに変えただけでも、訳文が異なってくることは普通にある。

正反対の意味の翻訳をする

これは注意すべき点だ。なぜだかわからないが、noとかnotなどの否定の言葉が入っているのに、それを全く無視した肯定の意味の翻訳を、ごくまれにだが出すことがある。また、noやnotを使わない文でも、意味を逆に捉えて翻訳しているケースも見つけた。

随分前に2つの例をスクリーンショットで残してあったが、今同じ文章を入力すると正しい翻訳をするようになっていた。学習をしたのか、それともあの時は大量の翻訳をさせられて疲れていたのか?

とある文字列に対して妙なフレーズが出てくる

これも注意すべき点だが、お世話になったDeepLの名誉のために言っておくと最近は全くない。一年前、翻訳を初めてすぐの頃の話だ。

具体的には忘れてしまったが、ひとつは、たしかクォーテーションマークと1つ2つのキーを入力すると妙なアスキーアートのようなものが翻訳欄に現れた。

もう一つは、翻訳の中に全く関係のない3行ほどの文章がでてきたことだ。これも同じ文章が出てくるのを何度か経験した。実はこの文章は最初に一括翻訳したファイルに残っていたので、今見てみた。なにか、カスタマーサービス用の文章みたいだ。

しかし、最近は出現しないと言ったものの、今度はこの残っていた文章をコピーしてDeepLに翻訳させてみたら、これまた妙な全く関係のない文章が翻訳欄に現れた。

このブログを書き始めるにあたって、あらためてDeepLの利用規約を読んでみてわかったが、前にも書いた通り、無料版に入力されたテキストはAIの訓練にも使用されるそうだ。さらに、ユーザーが施した翻訳文の修正も使用されるらしい。

一年前といえば、DeepLの日本語サービスが始まってからまだ一年。利用者数もいまほど多くなかっただろうから、その頃に無料サービスを集中的に利用した人の影響が残っているのかもしれない。

つづく

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英訳の経緯はこちら

 

DeepL小説、Grammarly小説の未来(7)ー AI翻訳で出会った現象 1/3

これだけ大量の翻訳をやっていると、いくつか興味深い経験もした。特にAIならではと思われるものがいくつかある。

やはり、100回同じインプットをすれば、100回同じ答えが返ってくるこれまでの機械とは違うのだ。きっと、AIは日々新しいことを吸収しているのだ。

1.Grammarlyは上品

初期の頃はGrammarlyのwebエディターの上で随分長い時間を過ごしたのだが、やはりガンガンと新しい翻訳を出してくるDeepLのような派手さが無い分、印象は控えめだ。

お茶目だなと思うことがあったのは、たまに全部指摘をクリアして、これでもう大丈夫だと修正文全体をコピーをするような段になって、ポツリと指摘の赤線を出してくることだ。

きっとその時々でサーバーの混み具合が違い、必要なチェックの深度に達する時間に差が出るのだろう。また、DeepLもそうだが、時間が経つと同じ文章でも指摘がわずかに異なって来ることもあるようだ。AIが進歩しているということだと思う。

たまーに、この指摘はおかしいかなと思うものは確かにある。それから、Grammarlyが間違いを指摘し、提案してきた修正案の通りに修正すると、別の間違いの指摘と提案が現れ、それを採用するとまた別の間違いの指摘と提案が現れ、それを採用すると最初の間違いの指摘に戻るという、ループのような現象もまれにあった。

でも、自分ではこれは絶対にGrammarlyの判断がおかしいと思っていたものが、ふと気づいた修正、例えばどこか離れた所にコンマを打つとか、複数形のsを一つ取ってみるとかで、スッと指摘の下線が消えてしまうことがある。

その理由がわかった時、ああやっぱりAIは賢いと感心することになり、翻訳が進むにつれ、私は文法の面では徐々に謙虚になっていった。

2.柔軟な翻訳をするDeepLとやや固いGoogle翻訳

DeepLは大抵の場合、和文英文とも、かなり崩れた文でもなんとか無理して翻訳してくれる。文章の趣旨をつかんでそれに合った自然な文を創造してくれているようで大変ありがたい。対してGoogle翻訳はやや固い。直訳に近い翻訳をすることもある。

ただDeepLの場合その柔軟さが行きすぎてしまうのか、英文のチェックをしていると、どうも日本語訳がおかしいのではないかというものにもたまに出くわす。自分が知っている英語の知識からして、決してこんな訳にはならないだろうというものだ。

そんな時は、Google翻訳にもかけてみる。するとこちらの方が、ぎこちなくともかっちりと訳してくれるので、自分の考えが正しかったということがわかって安心するのだ。

だから、翻訳作業をやっている時は、常にDeepLとGoogle翻訳のウィンドウを立ち上げておいて、疑問があったり、不安がある場合にはGoogle翻訳にもかけて確認するということをしていた。

つづく

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